音楽塾 ワクイ・システム
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天真の人


小倉 朗 (作曲家)

涌井曄子さんは四才のときからピアノを習いはじめた。最初の先生は今は亡き御両親。お父さんはヴァイオリン、お母さんはピアノ。そこでお父さんの高城重之氏に触れておくと、明治初年、九州に生れる。音楽における草昧の時期、高城少年は、手製のヴァイオリンを巧みに弾いていたという話がある。作曲もしきりにしていた様子で、その何曲かを拝見したことがあるが、基礎的な和音への通暁は、そのまま耳の確かさを物語ってくれた。

涌井さんは、そういう両親のもとで、ピアノや音感も身につけ、恵まれた環境のなかで、音楽の血筋をそのままに受けついで今日に至るというふうである。

初めて涌井さんにお目にかかったのは、かつて涌井さんの先生だった入野義朗氏の病室、慶応病院においてであった。そのとき、口を交わす機会は持たなかったが、天真な美しい目に、人柄を強く印象づけられる。

やがて涌井さんは、五線紙をもって、ときどき僕のところへ訪れるようになる。こうして知ることになった作品は、いずれも人柄から受けた印象を裏切るものではなかった。そして、天真なその楽風に、かつて涌井さんがピアノを習い始めた四才のときの瞳を思うのである。

涌井さんのつくった子供のためのピアノ曲は、子供たちが音符に馴れるために、涌井さんが考え出した独特な「絵おんぷ」で始まります。それは「絵おんぷからバイエルまで」の上、下巻。そして、みんなが知っている世界の童謡や民謡をもとにした「絵おんぷどうよう」と続き、「たのしいリズム」「たのしいおうた」「たのしいピアノ」と広がって、今度出版になった「古い手箱」に及びます。いずれも標題の示す通りの美しい曲集で、いかにも涌井さんらしい可愛らしい仕上がり、さし絵は涌井さんのお嬢さん、田原合恵さんの手によると聞きます。